[2018-6-1] 日本不動産学会:シンポジウム「所有者不明土地のゆくえ」①

日本不動産学会 2018年度 春季全国大会 に参加してきました。
シンポジウムのテーマは「所有者不明土地のゆくえ」でした。

 

 所有者不明土地については、ちょうど当日の午前中、政府の次のような対策案が公表されました。
(日経新聞 2018.6.2より)
 まず、所有者不明土地の実態把握が必要ですが、今のところ九州より広い土地が・・・と言われていますが、実際にどれだけの土地所有者不明の状態にあるかは不明です。日経新聞の調査によると、所有者不明土地の実態を把握している自治体は1割弱に留まるということです。(日経2017.12.26)そもそも所有者不明と言っても、所有者の所在が不明な(連絡がつかない)ケース、所有者は亡くなっていて相続人の所在が不明(連絡がつかない)ケース、所有者が亡くなっても争いがあって遺産分割協議が整わないため登記変更できないケース、所有者が亡くなって長男が単独相続したような意識ではいるが改めて遺産分割協議を行うには相続人が増えすぎて手を付けられないケースなど、解決のためのプロセスが異なるケースが混在しています。
 所有者不明土地の存在は、自治体にとって固定資産税の徴収ができなくなる問題、公共用地買収がスムーズに進まない問題、防犯や防災の問題などが大きいほか、周辺居住者にとっても管理者がいないまま放置されることにより空き家の発生や雑草・雑木が茂ることによる居住環境の悪化が生じます。
 所有者不明土地の問題を解決するためには、①まず自治体レベルで実態把握を行い、②所有者不明状態の解消(現在所有者不明となっている土地の所有者の特定と登記名義の変更)を行うと同時に、③今後所有者不明土地を発生させない仕組み作りが重要となります。
 上の政府の案では、②過去の産物であ所有者不明状態の解消のために、登記官に所有者特定のための調査権限を付与する、マイナンバーなどで登記簿と戸籍情報を連携させる、また③将来、所有者不明土地を発生させないために、相続登記の義務化、土地所有権の放棄やみなし制度の導入について検討しています。
今後はさらに所有者不明土地は増加して、2040年には2倍近く、北海道本島の面積を超えるとされており、早急な対策が必要とされていますが、自治体では①実態の把握も遅れている状態にあるため、先行きはまだ見通せない状況です。