[2018-6-7] 日本不動産学会:シンポジウム「所有者不明土地のゆくえ」② 特措法の成立

ちょうど学会開催に合わせるように(?)、6日、衆議院本会議で「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」が可決、成立しました。

この特措法は、所有者不明土地問題の根本的解決を目指すものではなく、所有者不明土地が増加することによって発生する多くの問題の1つ、公共事業予定地に所有者不明土地が混在することで事業実施に支障が生じていることを背景に、公共事業実施の円滑化を図るものです。

 

「所有者不明土地」
相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地

 

【特措法の概要】

 (1) 所有者不明土地の利用の円滑化のための特別の措置

① 地域福利増進事業の創設と利用権の設定(第6条ー第26条)
 地域福利増進事業(地域住民等の福祉・利便の増進に資する事業)について、都道府県知事が公益性を確認し、一定期間の公告に付した上で、利用権(上限10年間)を設定することができる。但し、所有者が現れ明渡しを求めた場合は期間終了後に原状回復し、異議がない場合は延長が可能である。

※「地域福利増進事業」とは
 次に掲げる事業であって、地域住民そ の他の者の共同の福祉又は利便の増進を図るために行われるもの

1. 道路法による道路、駐車場法による路外駐車場など
2. 学校など
3. 公民館、図書館など
4. 社会福祉事業の用に供する施設
5. 病院、療養所、診療所、助産所など
6. 公園、緑地、広場、運動場
7. 被災者の住宅など
8. その他

 

② 特定所有者不明土地の収用または使用に関する土地収用法の特例(第27条ー第37条)
特定所有者不明土地については、都道府県知事が事業認定した事業は、収用委員会に代わり都道府県知事が裁定を行うことができる。

※「特定所有者不明土地」
 所有者不明土地のうち、現に建築物が存せず、かつ、業務の用その他の特別の用途に供されていない土地

所有者不明土地を適切に管理する仕組み(第38条)
 所有者不明土地の適切な管理のために特に必要がある場合に、地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し財産管理人の選任等を請求可能にする制度を創設
 (2) 土地所有者の効果的な探索のための特別の措置
  ① 土地所有者等関連情報の利用及び提供(第39条)
土地の所有者の探索のために必要な公的情報について、行政機関が利用できる制度を創設
   ② 特定登記未了土地の相続登記等に関する不動産登記法の特例(第40条)
長期間、相続登記等がされていない土地について、登記官が、長期相続登記等未了土地である旨等を登記簿に記録すること等ができる制度を創設